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INDEX

RADEX RD1008購入記

注意・免責事項

背景・選定条件

ガイガーカウンタを買おうと思った背景(◆)およびガイガーカウンタに求める条件(★)を以下に示す。 項目の並び順は優先順位とは無関係である。

東京電力・福島第一原子力発電所の原発事故がなかなか収束しない
◆2011年5月17日に東電が発表した最新の工程表 (→当面の取り組み(課題/目標/主な対策)のロードマップ 5/17改訂版) によると事故収束まで6~9ヶ月を要するとの見通し。
生活エリアの放射線の強さを知りたい
◆自宅から最寄りのモニタリングポストまで約6km離れている。
◆生活エリア内にホットスポットがあるか知りたい。
◆空中の放射線強度だけでなく地表に堆積した放射性物質の影響を知りたい。
★最寄りのモニタリングポストの値が100nGy/h(=0.1μSv/h)未満なので0.1μSv/hよりも低い空間線量率を測定できること。
積算線量を知りたい
2011.6.6修正
★2011年3月15日に自転車で会社に行ったら被曝しているっぽい可能性がある(参考→ 東京 3月15日 と 5月15日3月15日東京を襲った「見えない雲」 )ので積算線量をモニタできること。
表面汚染を把握したい
◆窓や玄関、屋根のない駐輪場に雨ざらしになっている自転車などの汚染が気になる。
◆掃除でどれだけ影響を小さくできたかを把握したい。
★表面汚染を計測できること(β線を計測できること)。
その他
◆モニタリングポストの値を見る限り急を要する状態ではないとはいえ、自分で確認できると安心である。
◆食品の汚染を測れることは考慮に入れない。10万円程度のガイガー管を使った測定機では表面に汚染物質が付着しているのがわかるかもというレベルで 根や葉などから体内へ吸収された放射性物質のベクレルを測定するにはもっと高価で正確な測定器が必要なため (参考→緊急時における食品の放射能測定マニュアル(厚生労働省))。
★予算は10万円程度まで、即納、取扱いが簡単なこと(手計算がいらない、計測時間が短くて済む、ハンディサイズ、、、)。

候補

まず、緊急自然災害板(2ch)のガイガーカウンタ関係のスレッドで話題になっている機種の中から 予算を大幅に超えない範囲のものをピックアップした。

SE International社
Inspector+
ECOTEST社
TERRA MKS-05(黒)
QUARTA社
RADEX RD1008RADEX RD1706RADEX RD1503
中国メーカー
機種いろいろ…

次に○×を付けて条件を満たすものを絞り込んでゆく。即納状況と予算は購入を検討した2011年5月20日ごろのもの。 中国メーカーのものは予算10万円まで出せるならあえて選ぶ必要はないだろうということで外した。 RADEX RD1008のγ線計測範囲の単位がウェブページ上ではmcSv/hとなっているがこれはμSv/hのことである。

機種 γ線計測範囲 積算線量機能β線計測即納状況予算
Inspector+ 0.01~1000μSv/h × ×
TERRA MKS-05(黒) 0.1~9999μSv/h
RADEX RD1008 0.1~999μSv/h
RADEX RD1706 0.05~999μSv/h ×
RADEX RD1503 0.05~9.99μSv/h ×

この段階でTERRA MKS-05(黒)とRADEX RD1008の2択となった。

TERRA MKS-05(黒)とRADEX RD1008の比較

まず、メーカーのウェブページに掲載されているスペック (→TERRA MKS-05(黒)RADEX RD1008)を比較する。

項目 TERRA MKS-05(黒)RADEX RD1008単位
空間線量率の測定レンジ 0.1~9999 0.1~999 μSv/h
空間線量率の誤差 ±15 ±(15+3/H)% %
積算線量のレンジ 0.001~9999 0.001~999 mSv
積算線量の誤差 ±15% 15% %
β線束密度の測定レンジ 10~100000 6~999 1/(cm2・min)
β線束密度の誤差 ±20% ±(20+200/R)% %
検出可能なγ線エネルギー 0.05~3.0 ±25% 0.05~3.0 MeV
検出可能なβ線エネルギー 0.5~3.0 0.05~3.0 MeV
空間線量率の計測時間 1~70 1~21 Second
電池寿命 2000 最少950 Hour
大きさ 120x52x26 140x64x26 mm
重さ 0.15 0.175(電池除く) kg
空間線量率
◆どちらも測定レンジの下限は0.1μSv/h。欲を言えば0.01μSv/hくらいまで伸びていてほしいがそこは値段とのバーター。
◆上限はMKS-05の方が一桁大きいが原発の近くで作業するわけでもないのでRD1008の999μSv/h (これは一般人の年間許容量である1mSvに1時間で達するような強さ)で十分と判断した。
◆誤差はRD1008は放射線の強度が低いほど誤差が大きいことが謳われている (ウェブページのスペック表には「where N is the dose rate in mcSv/h」と誤って記載されているが 英文マニュアル(PDF→)では 「where H - the dose rate in μSv/h」と記載されている)。 RD1008の誤差の大きさを計算すると以下のようになる:
Hが10 [μSv/h]のとき…±(15+3/10) = ±15.3
Hが1.0[μSv/h]のとき…±(15+3/1.0)= ±18
Hが0.2[μSv/h]のとき…±(15+3/0.2)= ±30
Hが0.1[μSv/h]のとき…±(15+3/0.1)= ±45
積算線量
◆年間で20mSvでも高い値なのでどちらの機種でも十分である。
β線束密度
◆測定レンジの下限が低いのはRD1008。
◆上限はMKS-05の方が大きいが、こちらの記事 (放射線基準値超の貨物は除染が必要(ロシア)- ジェトロ) によると遊離性ベータ粒子の数が1分当たり1平方メートルにつき10を超える場合は除染の対象ということから検出したらアウトということ??? なお、スペック表は1分当たり1平方センチメートルであることに注意。
◆誤差はRD1008は放射線の強度が低いほど誤差が大きいことが謳われている (メーカーのスペック表には「where R is the flux density, 1/cm2*min 」と記載されている)。 RD1008の誤差の大きさを計算すると以下のようになる:
Rが100[1/(cm2*min)]のとき…±(20+200/100)= ±22
Rが10 [1/(cm2*min)]のとき…±(20+200/10) = ±40
Rが6 [1/(cm2*min)]のとき…±(20+200/6) = ±53.3
検出可能なγ線エネルギー
◆どちらの機種も同性能である。
検出可能なβ線エネルギー
◆RD1008はMKS-05より一桁弱いβ線まで検出できる。
空間線量率の計測時間
◆計測時間は空間線量率に依存する(空間線量率が低いと計測時間が長くなる)ことと 自分の生活圏内は計測下限付近の低線量率と考えられることからMAXで21秒のRD1008の方が手早く計測できそうである。
大きさ・重さ
◆MKS-05の重さは電池のありなしが不明だが、MKS-05の方が若干小型である。

スペック表以外の比較も。

β線の測定方法
◆MKS-05は筐体裏面のガイガー管のフタを開ける前と開けた後とで値を比較してβ線の強さを求める、らしい。
◆RD1008はγ線とβ線とでそれぞれガイガー管が分かれていてかつ表示も2つ同時に表示されるので、RD1008の方が楽。
β線の測定時間
◆RD1008は英文マニュアル(PDF→)によると21秒。

以上より、1)空間線量率の計測時間、2)表面汚染の確認の簡単さからRADEX RD1008を第一候補、TERRA MKS-05(黒)を第二候補とし、 ヤフーオークションで即決即納かつ予算内のRADEX RD1008(英語モデル)が出品されていたのでそれを落札、入手した。

その他補足

1)取説
◆落札した商品にはエントン株式会社による日本語取扱い説明書が添付されていた。 これは大本の取説から「1.3 Structure and principle of operation」「2.4 Possible malfunctions and their elimination」を抜粋して翻訳したものである。
◆日本語取説だけでも操作はできるが英文マニュアル(PDF→)も読むべきである。 英文マニュアルには「特徴」「安全な測定のための注意事項」「測定の方法」などが掲載されている。 以下、いくつか気になったところをピックアップする。
2)β線検出器の窓はマイカの薄い板が使われている
◆英文マニュアルp.23 2.1.2.2 Safety measures when handling the productより引用:
9) You should be particularly cautious when the shutter is open (see art. 1.3.1), since the detector window is closed with a very thin plate of mica, which can easily be damaged by extraneous objects.
◆(超テキトウな訳)検出器の窓はとっても薄いマイカ(雲母)の板で封をしてあって、これは異物で簡単にダメージを受けるので、 裏面のシャッターを開けるときはとくに慎重にすべきである。
◆検出器にマイカ窓を使っているものとしてはたとえばInspector+がありガイガーカウンタ関係のスレッドで取扱いには細心の注意が必要(異物のほか、 湿気が苦手なことなど…)なことがたびたび指摘されているのでそれと同じくらいの丁寧さが求められる。
3)電池の入れ方
◆本体底面の細長いスロットに電池フタのツメが嵌っているのでこれをコインのようなもので押してフタを開ける(英文マニュアルp.24 2.2.2 Battery Installation)。
4)電源を入れるとき
◆電源を入れる前に必ず裏面のシャッターを閉めること(英文マニュアルp.25 2.3.1 Switching on the product)。
5)電源を切るとき
◆電源を切ったあと、裏面のシャッターを開けていたら閉じること(英文マニュアルp.27 2.3.5 Switching off the product)。
6)β線の測り方
◆裏面のシャッターを開けて、裏面を測定対象に向けて(英文マニュアルp.25 2.2.4.2)、3mm~5mm離して(英文マニュアルp.25 2.2.4.3)測定する。

更新履歴

  1. 2011.05.28 初版アップロード
  2. 2011.05.29 RD1008の誤差の大きさの計算例を追記
  3. 2011.06.06 背景・選定条件の積算線量の項目を修正
  4. 2011.11.19 背景・選定条件の積算線量の項目に「東京 3月15日 と 5月15日」へのリンクを追加


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